2012-03-25

支援機構の奨学金はれっきとした借金です。

Newsweek日本版に、アメリカの学生ローンについての記事が出ていた(こちら)。

それによれば、

  • 残高1兆ドル(82円換算で82兆円)を超え、ニューヨーク連銀の予想を16%も上回っている。
  • 一人当たりの平均借入額は76,000ドル(同、6,232千円)。
  • 25%が延滞。

とのこと。

一方で日本はどうなのだろうか。

まずは日本学生支援機構(以前の日本育英会)。
文部科学省の23年度予算では件数は1,270千人、金額で1,078,100千円(1兆78億円)。一人平均848千円。高校分は含まれていない。

もう1つは日本政策金融公庫のいわゆる「国の教育ローン」。
直接貸付、および代理貸付の合計で23年3月の残高は1,079千件、897,641,457千円、平均は831千円。元データは日本政策金融公庫、国民生活事業、行頭系年報、25〜26頁)

日本の代表的貸付型奨学金は上記2方法であるが、これら以外にも民間金融機関のローンもある。但し、私が勤務する協同組織金融機関においてはまず取り扱うことがなく、少なくともここ2年は申し込みを受け付けたこともない。

また、支援機構、金融公庫ともに利用者数(件数)での平均は800千円台であるが、1〜4年生全ての平均であることから、1人個人の最終的な利用残高としてはおそらく2倍程度の1,600千円程度になるのだろう。実際私も利用したが、当時は今のように複雑ではなく、自宅は月47千円の固定、これを2年間借りたため合計1,128千円の利用であった(幸い、無利子が適用できたので利息は払っていない)。

政策公庫の利用残高は数年横ばい維持の印象だが、支援機構についてはかなりな勢いで右肩上がりが続いている。

奨学金事業の事業費:文部科学省サイトから引用
私が卒業した平成11年度で3,781億円、23年度が10,781億円。この12年間で2.85倍に増加している。
支援機構は一人当たりの利用金額に決まりがあるので金額の増加はそのまま利用者数の増加になる。

貸与人員の推移:文部科学省サイトから引用
(上記2種の図表はこちらから引用:文部科学省、奨学金事業の充実)

同じく私が卒業した11年度は65万人であったのに対し、23年度は127万人。2倍弱の増加である。

借入の増加に伴い、延滞の増加についても時々ニュースで耳にする。延滞については若干古いデータではあるが、支援機構の平成21年度奨学金の延滞者に関する属性調査結果のサイトに詳しい。

私は10年で返したので毎月の返済額は94千円、無事に完済することができた(途中、入金忘れでの延滞は2〜3回ぐらいあったが、当時は延滞にもうるさくなく、電話すれば来月まとめて引き落としておきますですんでいた)。

国の教育ローンは親名義での完全な借入であるし、窓口にも「借りる」つもりでお客様も来店される。一方で支援機構の奨学金は学生自身が申し込むこと、そして「奨学金」という言葉に惑わされ、「借入」という意識は少ないと思われる。私も手続き中はそうであった。もちろん、手続き中に償還方法についての説明はあったが、そんなものは一切覚えがない。だが、奨学金は間違いなく「借金」なのである。

私が借金の意識を持ったのは卒業式前後の3月にリレー返済の手続用紙が手元に届き、就職して研修が終了、支店に配属された翌日に預金担当の女性職員へ自動引落しの手続用紙を手渡したときである。
奨学金の引落しするってことは、入社早々借入の返済手続ってことだね。
おっしゃるとおり、2年間かけて借金を積み上げ、それを10年で返す日々が始まったのである。無事に3年前、完済にこぎ着けたが、今でも「奨学金返還完了通知」は手元に大事にとってある。

先週は至る所で袴姿の卒業生を見かけた。前途洋々とサラリーマンとして羽ばたいていくのであろうが、奨学金を利用した方はもう既に「負債者」であることも、肝に銘じて働いてほしい。

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